高度に発達した現代社会に生きる私たちの日常は、
電気・ガス・水道など多くのライフラインに支えられています。
まさに「人間の衣食住の基礎」といえるライフラインですが、
当然ながら使用していた人(名義人)の方が亡くなった場合、
理論上、「電気やガスを供給する人がいなくなった」ということになりますので、
状況に合わせて名義変更・解約・使用中止などの手続きが必要になります。
人が亡くなった後は葬儀の準備や実施、関係者へのお礼や挨拶、
役所等への各種手続きなど色々と対応すべきことが急増し、
つい公共料金関連への対応が後回しになりがちですが、
亡くなった方宛てにいつまでも請求書が届くのは不自然ですし、
支払いが滞ったりすると支払いをめぐり、遺族間でトラブルになることもあります。
こういった事態を回避するためにも、
ライフラインの手続きはできるだけ早く、忘れずに行いましょう。
手続きをする人と清算する人
まず、手続きを行う際の前提として、手続きを実行する人を決めなければなりません。
これはよっぽと特別な事情がない限り、
故人(名義人)と全く関係がない他人が行うことはなく、
やはり遺族が行うことになります。
誰が手続きをするのか?
ライフラインの手続きは、故人との関係や手続きの理由説明などもスムーズに行える
近しい遺族が適任です。特に、故人の遺産を相続する遺族、
または故人の生前の生活状況をある程度知っていた遺族が望ましいでしょう。
逆にいくら故人と関係が近くても、
生活状況をあまり知らない人が手続きをしようとすると
事が想像以上に煩雑になることがあります。
どちらにしても、遺族・親族同士がお互いに情報と知恵を出し合って
協力しながら手続きをすることが大切です。
残金などは誰が支払うのか?
故人が生前使った分の電気・ガス・水道代などはもちろん支払う必要があります。
そこで誰が支払うのかが問題となりますが、
基本的には故人の遺産を相続した遺族が支払うことになります。
ライフラインが供給されていた家(不動産)を相続する予定の遺族は、
近いうちに自分の名前を契約名義人にする必要が出てきますし、
民法では遺産を相続する人は、
負債(この場合は残金)も一緒に相続することになっているからです。
- 手続きは故人の生前の生活を知っていた遺族が適任
- 清算は故人の遺産を相続する人がする
電気・ガス・水道など各種ライフラインの手続き
それでは次に、各種ライフライン別に手続きの方法と時期、注意点などを見ていきましょう。
手続き自体は比較的簡単ですし、
最近ではインターネットを通しての手続きも用意されていますので、
身構えることはまったくありません。
まずは各供給会社に連絡し、
それ以降は指示に従えば問題なく手続きが終了することがほとんどです。
電気
遺族の方が故人の家に居住、または管理する場合は相続人へ名義変更します。
他方、家を売却などで処分することが決まったら、
家の中を整理した後に解約手続きをします。
この流れは以降のガスや水道でも同じです。
以下は東京電力の例ですが、手続きには次のような方法が用意されていますので、
参考にしてみてはいかがでしょうか。
- 電話から=各地域管轄のカスタマーセンターの電話番号はこちらから検索可能
- インターネットから=まずは「引越しの申込み」ページを開き、引越し先住所の欄に残金等の請求書送付先を入力後、次のページで「電気を止める」を選択する
上記のいずれかの方法で申し込んだ後、
電力会社側から具体的に何をすればよいのか指示があるので、
それに従って具体的な手続きをします。
残っている支払いはすべて新しい契約名義人に引き継がれますので、この点を留意しておきましょう。残金を引き継がず、清算してから名義変更を行う場合には、カスタマーセンターに電話してその旨を伝えましょう。少しでも手続きが複雑になりそうだと感じたら、カスタマーセンターへ相談するのが得策です。
ガス
ガスの場合も基本的には電気と同じく、
状況に合わせて名義変更か解約(使用停止)の手続きをします。
下は東京ガスの手続き方法です。地域によって契約ガス会社が違いますので、
毎月送られてくる請求書等で契約ガス会社を確認しておきます。
- 電話から=「東京ガスお客さまセンター」電話番号、その他詳細情報はこちらから
- 電話から=名義変更手続きと同じページからできます
- インターネットから=東京ガスホームページ内「ガス使用停止のお申し込み」のページから申し込み可能です(※)「お客様番号」の入力があるので、請求書等で要確認
水道
水道の場合も状況に合わせて名義変更、または解約(使用停止)手続きをします。
下は東京都水道局の例です。
- 電話のみ受付可=「水道局お客さまセンター」の電話番号等詳細はこちらから
固定電話
個人が所有するスマートフォンなどの携帯通信機器の普及した今、
自宅に固定電話を設置しない家庭も増えてきていますが、
故人が高齢の方だった場合には固定電話を設置していることが多く、
その場合には名義変更や解約などの手続きが必要です。
また、固定電話が電話加入権を購入した上で設置したものか否かも
手続きの際に確認しなければなりません。
加入電話(電話加入権あり)
電話加入権は言葉通り「権利」ですので、相続することができます。
今まで通り固定電話を使用する場合には名義変更のため、
「加入権等承継・改称届出書」の届け出をする必要があります。
- 「加入権等承継・改称届出書」をNTT東日本ホームページ内のこちらからダウンロード後、必要事項を記入の上、NTT東日本加入権センターへ郵送
電話加入権は相続の対象ですので、
故人(名義人)と権利を承継する人(相続人)との関係を確認できる書類
(戸籍謄本、住民票の写しなど)
の提出も求められることに注意しましょう。
必要書類についての詳細はこちらから確認できます。
- インターネットから=NTT東日本ホームページ内のこちらから申し込み可能(※)料金支払い方法の情報がわかる預金通帳やキャッシュカード、またはクレジットカードなどを手元に用意しておきます
- 電話から=固定電話からは「116」、固定電話以外からは「0120-116-000」で解約・一時使用休止の申し出が可能
(※)あくまでも正式な申し込みではなく、申し出ができるだけなので、電話の後も引き続き書類提出の手続きをしなければならないことに注意
電話加入権なしの固定電話(加入電話・ライトプラン)
電話加入権付き固定電話と違い、
そもそも「権利」ではないので承継や譲渡などはできず、名義変更もできません。
引き続き使用を希望するなら一度故人名義の契約を解約し、
また新しく契約し直さなければなりません。
- インターネットから=NTT東日本ホームページ内のこちらから解約の手続きが可能(※)料金支払い方法の情報がわかる預金通帳やキャッシュカード、またはクレジットカードなどを手元に準備しておく必要があることに注意
- 電話から=固定電話から「116」(携帯電話・PHSなどからは「0120-116-000」)にかけて解約の申し出をする(※)電話の後も手続きが必要なことに注意
携帯電話
携帯電話については固定電話のようにインターネットから手続きできる場合は少なく、
ほとんどの通信会社では最寄りの店舗に立ち寄って手続きをする必要があります。
以下はNTTドコモの例です。
- 携帯電話本体、相続関係がわかる書類(戸籍謄本・抄本など)、新利用者の本人確認ができるもの(免許証など)、支払い手続きに必要なキャッシュカードや印鑑、クレジットカートを準備して最寄りのドコモショップで手続き(※)手数料は無料
- 携帯電話本体、契約者の死亡が確認できる書類(死亡診断書など)、手続きする人の本人確認ができる書類(運転免許証など)を準備して、最寄りのドコモショップで手続き
携帯電話を解約した場合、解約した日までの料金は後日請求されます。
この料金を誰が払うのか、あらかじめ遺族間で決めておくとよいでしょう。
NHK
NHKの受信料の支払いは国民の義務となっていますので、
こちらも故人のテレビを視聴し続けるなら名義変更の手続きが必要です。
また、故人の家等と一緒にテレビも処分する場合は解約手続きをしなければなりません。
- 電話から=NHKナビダイヤル「0570-077-077」(IP電話等の場合は「050-3786-5003」)に連絡して手続き可能
- インターネットから=NHKインターネット営業窓口センター内にあるこちらのページから手続き可能
- 電話から=NHKナビダイヤル「0570-077-077」(IP電話等の場合は「050-3786-5003」)に連絡して手続き可能
- インターネットから=NHKインターネット営業窓口センター内にあるこちらのページから手続き可能
- NHKナビダイヤル「0570-077-077」(IP電話等の場合は「050-3786-5003」)に連絡後、指示に従って所定の手続きをする
NHKの受信料は解約しない限り発生し続けます。解約するなら早めを心がけましょう。
インターネット
インターネットの利用者は年代を問わず多く、
今後は今以上に増えることが予測されます。
したがって、「うちは年寄りが多いし……」などいって
インターネットの利用を想定外にしない方が、後々手続きで面倒なことになりません。
とはいってもインターネットのどのようなサービスを契約してるのか、
契約者本人が高齢者だった場合はあまり理解していないこともありますので、
日頃から親族がサービス内容・契約会社を把握しておきたいものです。
プロバイダー
国内には数多くのプロバイダーがありますが、ここではBIGLOBEの手続きを例にとります。
- BIGLOBEカスタマーサポートに電話後、契約を承継する旨を伝え、戸籍謄本(原本)、配偶者または二等親以内の法定相続人であることを確認できる書類、新契約者の本人確認ができる書類を用意。その後、BIGLOBEから郵送される所定の手続き書類と一緒にBIGLOBEへ送り返す
- BIGLOBEカスタマーサポートに連絡後、その月の末日をもって契約解除になる
インターネット回線(フレッツ光の場合)
どのようなインターネット回線を使っているかにより手続き方法も変わりますが、
ここではNTT東日本のフレッツ光を例にとります。
- インターネットから=「加入権等承継・改称届出書」をNTT東日本ホームページ内のこちらからダウンロード後、必要事項を記入の上、NTT東日本加入権センターへ郵送
故人(名義人)と権利を承継する人(相続人)との関係を確認できる書類
(戸籍謄本、住民票の写しなど)の提出も求められることに注意します。
- 電話から=「0120-116116」に連絡後、指示に従って手続きを行います
機器をレンタルしていた場合などは返却も必要です。
新聞
新聞の場合は契約しているのが従来の宅配の新聞なのか、
それともインターネット版なのかで手続き方法が異なることが多いようです。
新聞が宅配されていた場合は、
各新聞の最寄りの販売所に電話で連絡をしてください。
また、インターネット版の各種手続きにはログインIDやパスワードが必要ですので、
不明な場合は各新聞社ホームページ内にあるサポートデスクなどに連絡をしましょう。
手続きを行う時期
預金財産をめぐるトラブルを回避するため、
故人が公共料金の引き落としなどに使っていた銀行口座は、
口座名義人の死亡判明後、凍結されて一切の取引ができなくなります。
そうなると各種公共料金の未払いが発生してしまうので、
場合によっては溜まった未払い金が多額になってしまうことも。
このような事態にならないよう、
親族が亡くなったらできるだけ早くライフラインの手続きをします。
可能であれば葬儀から1カ月~2カ月以内が理想です。
その際は誰が何を承継し、何の料金を支払うのかも決めておいた方がよいでしょう。
手続きで大切なこと
一通り説明しましたが、意外と準備書類が多いことに驚かれたのではないでしょうか。
こうしたことを見越して、必要になりそうな書類をあらかじめ複数用意しておくと
手続きが楽になります。
また、最近はライフラインのサービス内容・料金体系が複雑化していますので、
この点も前もって請求書や契約書などで確認しておくと混乱せずに済みますね。
手続きをしなかったことで
未払い金が生じるなどして故人に不名誉なことが起きたりしないよう、
遺族間で話し合いながらできるだけ早く手続きを進めましょう。