遺族年金の受給資格者は?手続きや金額、受取期間について

配偶者や親など、親族の中でも特別に近しい人が亡くなるのは本当につらいことです。

あまりの喪失感に、葬儀の後は現実を受け入れることが難しく、

ただ呆然としてしまう方もいらっしゃいます。

しかし、そんな中でも毎日の生活は維持していかなければなりません。

 

特に、生計を支えていた「大黒柱」の方が亡くなった場合、

すぐに今後の生計の立て方を考え、実行に移すことが必要になります

ここではそんなとき、

残された家族の経済的な強い味方となる遺族年金について解説していきます

遺族年金は非常に優れた制度ではありますが、

受給資格のある方は自ら率先して手続きを行わなければなりませんので、

出来る限り素早く行動に移すようにしましょう

遺族年金とは?

遺族年金とは、国民年金、

または厚生年金の被保険者(つまり、毎月年金保険料を支払っていた方)の遺族が

単独で今後の生計を立てることができない場合に支払われる年金のことを指します

いわば、一家の大黒柱を失った方に年金を支払って

当面の生活を補助する生活保障の制度

ただ、年金にも今まで「国民年金」や「厚生年金」など種類に違いがあったように、

遺族年金にも今まで支払ってきた年金保険料が国民年金か厚生年金かによって

受給できる遺族年金の種類も違ってきますし、実際に受給できる金額にも違いが出ます。

遺族基礎年金

遺族基礎年金は国民年金に加入していた方の収入によって生計を立てていた配偶者、

または子が受給できるものです

国民年金は自営業者(フリーランス・個人事業主なども含む)や農業従事者、

20歳以上の学生など、一般的には会社員以外の働き方をしていた方が加入する、

日本の公的年金です

年金手帳等ですぐ判断がつけば問題ないですが、書類からはよく判別できない場合は、

亡くなった方がどのような労働形態で働いていたのか調べる必要があります。

遺族厚生年金

主に会社員として働いていた方の収入によって生計を立てていた配偶者、子ども、

亡くなった方の両親(子から見ると祖父母)が受給できるものです。

まとめ

遺族年金は「加入している年金組合」によって受給できる種類が分かれ、また、受給できる対象者も、どの遺族年金かによって違いがあります

受給対象者と受給できる金額

上で説明した通り、遺族年金には主に「遺族基礎年金」と「遺族厚生年金」の二種類があります。

それでは次に、遺族年金を受け取れる受給対象者と受給できる金額について見ていきましょう。

受給するには

被保険者(亡くなった方)と遺族(受け取る方)双方に要件が設定されていますので

それぞれの要件を満たす必要があります。

遺族基礎年金

被保険者についての要件

  • 60歳以上、65歳未満
  • 日本国内に住所があること
  • 老齢基礎年金の受給資格期間が25年以上あった、または受給していた


2017年から国民年金の受給資格期間が10年に短縮されましたが、

遺族基礎年金を受給する場合には今まで通り25年以上が要求されることに注意してください

受給対象者の要件

  • 子がいる配偶者(夫・妻)
  • 子(18歳到達年度である3月1日を過ぎておらず、未婚であること)
  • 20歳未満で障害者手帳を持ち、障害等級1級、または2級の子


子がいない配偶者は受給資格がないので注意してください

金額

  • 配偶者=77万9300円(年額)
    (※)一人目、二人目の子の加算額は22万4300円。三人目以降は7万4800円となります(どちらも年額)
  • 子=配偶者と同額。きょうだいについても上記金額と同じ

遺族厚生年金

被保険者についての要件

  • 厚生年金の被保険者であった期間中の病気やケガが原因で、初診から5年以内に死亡したとき
  • 老齢厚生年金の受給資格期間が25年以上あって死亡したとき
  • 1・2級の障害厚生年金の受給者


厚生年金への支払い期間が、国民年金への加入期間の3分の2以上あることが条件です

受給対象者の要件

  • 配偶者(妻・夫)
    (※)ただし、55歳以上であることが条件。また、実際の支給は60歳になってから
  • 子(18歳到達年度である3月1日を過ぎていないこと)
  • 20歳未満で障害者手帳を持ち、障害等級1・2級の子
  • 被保険者の父母(※)ただし、55歳以上であることが条件。また、実際の支給は60歳になってから
  • 被保険者の孫
  • 被保険者の祖父母(※)年齢要件・受給開始時期については夫・父母の例と同じ

金額

遺族厚生年金の額は、老齢厚生年金の報酬比例部分の年金額4分の3となります。
つまり、被保険者の給与額とこれに基づく今までの保険料によって遺族が受け取ることができる金額も変動しますので、受給できる金額はある程度はっきりさせたい場合には、年金事務所などに問い合わせするのも手です。

以上が大まかな諸条件ですが、状況によって受け取れない、

または受け取ることができる場合もありますので、迷ったときには最寄りの年金事務所や

年金相談センターに相談してみましょう。

共働き家庭の場合は?

遺族年金は被保険者の死後、自活が難しいと思われる遺族への支援制度です。

したがって、自活ができる経済状況だと受給できないことがあります

具体的には、遺族の将来年収が850万円以上になる可能性がある方などは受給ができません

ただし、被保険者死亡当時、配偶者に850万円以上の年収があっても、

向こう5年以内にこの年収がなくなる可能性のある方は受給できます

共働き家庭の場合は、こうした年収による受給制限があることを念頭に将来設計をしましょう

保険会社が販売する死亡保険や個人年金に加入しておくのも得策です

共働き家庭の場合のポイント

配偶者が亡くなり、受給要件を満たしている場合でも、850万円以上の年収が見込める場合には受給できないことに注意

手続き方法と選択

遺族年金の手続き方法

さて、遺族年金の受給が可能だとわかったら、次にすることは手続きです。

遺族年金の請求には当然のことながら金銭、

そして亡くなった方との法的関係が複雑に絡み合う性質がありますので、

用意する書類をきちんとそろえてから行ってください。

1 書類の準備

遺族年金の請求に必要な書類一覧(遺族基礎・遺族厚生年金共通)

  • 戸籍謄本(被保険者死亡後の、全部事項証明書)
  • 年金手帳(被保険者、請求者)
  • 住民票の写し(世帯全員の記載が必要)
  • 年金証書・恩給証書等、受給権のあるものすべて
  • 被保険者の住民票の除票(世帯全員の住民票の写しに含まれている場合は不要)
  • 被保険者、請求者のマイナンバーがわかるもの
  • 請求者の健康保険証
  • 請求者の収入状況がわかるもの(源泉徴収票、所得証明書など)
  • 子の収入状況がわかるもの(義務教育中は不要)
  • 子が高等学校在学中は学生証明書など在学を証明するもの
  • 死亡診断書のコピー
  • 請求者の預金通帳、印鑑(キャッシュカード等でも可)

2 年金請求書の準備・記入

以上の書類をそろえたら、次は年金請求書を準備し、必要事項を記入します。

年金請求書は年金事務所の窓口でもらえますし、インターネットを使用できる場合は

日本年金機構のホームページからもダウンロードできます

3 書類・年金請求書の提出

ここまできたら、最後はそろえた書類と必要事項記入済みの年金請求書の提出です。
どちらの遺族年金を請求するかによって提出先に違いがあります

提出先

  • 遺族基礎年金=市区町村の役場の窓口
  • 遺族厚生年金=最寄りの年金事務所

請求後、支給決定か否かは早い場合1カ月~2カ月ほどで通知されます

ただし、書類の不備等があった場合には大幅に遅れることもあります。

そのため、やはり事前の書類準備は抜かりなく行いたいものですね。

遺族年金の選択と併給

選択と併給

年金には「一人につき一つの年金」という原則があります

ですので遺族年金についてもこの原則が適用されるのですが、

状況によっては他の年金受給の要件も満たすことがあり、

このような場合は基本的にそのうちどちらかを選択して受給することになっています

どちらか一つを選択しなければならない場合

  • 遺族(基礎・厚生)年金と障害厚生年金
  • 遺族(基礎・厚生)年金と特別支給の老齢厚生年金
  • 遺族(基礎・厚生)年金と旧厚生年金の遺族年金

一方で、「併給」といい、特別にどちらも受給できる組み合わせがあります

併給できる年金の組み合わせ

  • 遺族厚生年金 + 障害基礎年金 or 遺基基礎年金
  • 遺族厚生年金 + 老齢基礎年金 or 遺族基礎年金
  • 遺族厚生年金 + 老齢厚生年金

基本的に、併給できる組み合わせ以外のパターンだった場合には

「一人一年金」の原則に従い

どちらかを選択しなければならないと考えておきましょう。

年金を選択する

二つの年金を受け取ることができる場合になったら、

併給できるパターン以外はすべてどちらか一つを選ぶ必要があります

選択の手続きは「年金受給選択申出書」を最寄りの年金事務所、

または年金相談センターに提出して行います

選択の手続き自体に期限などはありませんが、「一人一年金」の原則を守り、

後々複雑な状況になるのを避けるためにも、速やかに行ってください。

年金の選択のポイント

「年金受給選択申出書」を年金事務所、または年金相談センターに提出する

受給権が消滅する場合

遺族年金は

「家計を支える世帯主が亡くなった場合に自活できない遺族を経済的に支援する」

ものであり、

その制度趣旨が非常に明確です。

ですので、制度の目的を達成する必要がなくなった場合には受給できなくなります

それでは具体的にどのような場合に受給権が消滅するのか、下に例を挙げます。

遺族年金の受給権が消滅するとき

配偶者

  • 受給者の死亡・結婚(再婚)
  • 受給者が直系血族又は直系姻族以外の養子となるとき

  • 子が18歳の誕生日を迎えた年度末(3月31日)を過ぎたとき
  • 18歳以上で、1級・2級の障害認定を受けている子の障害がなくなったとき
  • 障害のある子が20歳に達したとき

父母・祖父母

  • 被保険者が死亡した時点では胎児だった子が生まれたとき

この他にも、遺族厚生年金の受給権を取得して5年経過し、

被保険者が死亡した時点で30歳未満、

子がいなかった妻などが該当します。

 

遺族年金の制度には目的があり、その目的が他の手段で達成されていれば、

遺族年金の出番はありません。

この点をよく考慮した上で生活設計を立てることをおすすめします。

遺族年金がもらえない場合、他の支援はあるのか?

遺族年金自体は非常に優れた、頼りがいのある制度ですが、

今まで見てきたように受給には諸条件をクリアしなければならず、

中には当然受給できない遺族も出てきます。

しかしそのような場合でも、遺族年金以外の経済的支援が用意されています。

その代表的なものが寡婦年金、死亡一時金、児童扶養手当です。

寡婦年金

その名の通り、妻のみ受給できる年金制度です。

子供がおらず、遺族基礎年金の受給ができない場合でも、

以下の条件を満たせば年金を受給できます。

寡婦年金受給の要件

  • 夫が平成29年8月1日以降に死亡した場合は10年間、それ以前の場合には国民年金を25年以上、保険料を納めてきたことが前提
  • 夫が生前に老齢基礎年金、または障害基礎年金を受給していなかったこと
  • 被保険者と10年以上続けて婚姻していたこと
  • 妻の年齢が60歳~64歳であること(※)妻が老齢基礎年金をもらっている場合は受給できません

寡婦年金の受給可能金額

  • 夫の被保険者期間に基づき、老齢基礎年金の計算方法で算定した額の4分の3

寡婦年金は支払った保険料がかけ捨てにならないようにする制度でもありますが、

「夫が死亡した翌日から5年」過ぎてしまうと時効にかかり、

請求できなくなってしまいますので注意してください

死亡一時金

こちらも寡婦年金と同様の制度趣旨ですが、死亡一時金は夫をはじめ、

状況によっては子や父母、祖父母も受給できることが大きな違いです。

死亡一時金の受給の要件

  • 被保険者が国民保険を3年以上納めてきたこと
  • 被保険者が生前に老齢基礎年金、または障害基礎年金を受給していなかったこと(※)被保険者が老齢基礎年金、障害基礎年金、または遺族基礎年金を受給していたときには受給できません

死亡一時金の受給可能金額

  • 国民保険の加入期間により、12万円~32万円と幅がある

死亡一時金にも「被保険者が死亡した翌日から2年」の時効がありますので注意しましょう

児童扶養手当

遺族年金の要件にあてはまらず、

経済的不安定が予想される低所得の一人親家庭を支援する制度です

受給には所得の制限があります。

児童扶養手当の要件

  • 受給できるのは日本国内に住所がある18歳までの子、または20歳未満で1・2級の障害を持つ子を養育する父母、その他の養護者
  • 所得が概ね236万円未満~350万円未満であること(※)扶養親族の人数によって違いがあります

児童扶養手当の受給可能金額

  • 児童の数によりますが、全額支給された場合は月額4万2290円。二人目、三人目にはそれぞれ9990円、5990円が加算されます

寡婦年金と死亡一時金の請求方法

この二つの制度趣旨は非常に似ていますので、請求方法も同じであることが特徴です。

1 書類の準備

請求に必要な書類

  • 故人と請求者の関係がわかる戸籍謄本
  • 被保険者の住民票の除票(世帯全員の住民票の写しに含まれている場合は不要)
  • 請求者の収入状況がわかる書類(源泉徴収票、所得証明書など)
  • 公的年金を受給している場合は年金証書
  • 請求者の預金通帳、またはキャッシュカード、印鑑

2 請求書の準備・記入

「国民年金寡婦年金裁定請求書」、もしくは

「死亡一時金裁定請求書」

最寄りの年金事務所または年金相談センターの窓口で入手します。

日本年金機構のホームページからもダウンロード可能です。

3 書類・請求書の提出

準備した書類と請求書を最寄りの市区町村の役場窓口、または年金事務所に提出しましょう。

児童扶養手当の請求方法

児童扶養手当の請求は寡婦年金、死亡一時金の請求方法と共通する部分がありますが、

書類の提出先が年金事務所ではないので注意しましょう

1 書類の準備

児童扶養手当の請求に必要な書類

  • 請求書と子の戸籍謄本
  • 世帯全員の住民票
  • 請求者名義の通帳と印鑑
  • マイナンバーが確認できるもの
  • 年金手帳

2 請求書の準備・記入

最寄りの市区町村の役場でもらえます。入手後、必要事項を記入します。

3 書類・請求書の提出

最寄りの市区町村の役場窓口に提出しましょう。

各種支援制度を利用する際の注意点

家族を扶養していた大黒柱の方が亡くなった場合でも遺族が路頭に迷わないよう、

様々な制度が用意されていることがわかりましたね。

それでは最後に制度を利用する際の注意点を挙げておきます。

遺族年金にも課税されるのか?

この点を心配されている方が多いですが、遺族年金は非課税ですので安心してください

そのほかの支援制度も非課税です。

  • 遺族基礎年金
  • 遺族厚生年金
  • 寡婦年金
  • 死亡一時金
  • 児童扶養手当

時効はあるのか?

遺族年金、その他の制度には時効があります

したがって、請求を考える場合は速やかに準備をしてください。

  • 遺族年金(基礎・厚生)=5年
  • 寡婦年金=5年
  • 死亡一時金=2年

児童扶養手当には時効がありませんが、

受給には各自治体の審査を受ける必要があります。

早く受給するためにも、速やかに準備・提出をしましょう

 

残された者ができることは、「前を向いて人生を歩むこと」です。

利用できる制度を使って、より良く・健康的な生活ができるよう、

皆で助け合いながらがんばっていきましょう。