相続トラブル!相続人不在や遺産分割、遺言の効力について

親しい人が亡くなったとき、難しいのが「遺産相続」です。

スムーズに決まったとしても書類が必要で、

それがないと故人の財産を動かすことはできません。

また、遺産をどのように分けるかでトラブルになった場合

どうすれば良いのでしょうか?

ここでは遺産をわける方法や相続人の順位

相続トラブルの解決策や遺言との関係を中心に、詳しく解説しています。

遺産分割とは

亡くなった人の財産を引き継ぐとき、誰か一人が全てを引き継ぐのであれば簡単ですが、

相続人が複数いる場合は簡単にいかないこともあります。

このようなときは誰が何を相続するのか決めていきますが、

それには相続の順位や遺言の有無なども関係してくるので、少々ややこしくなります

初めにこれらの点について理解しておきましょう。

遺産分割協議とは?

相続人が遺産を分けることを「遺産分割」、

これを決める話し合いのことを遺産分割協議」といいます。

遺産分割協議は相続人全員で行う必要があります

これは全員が顔を合わせて話し合うという意味ではなく、

相続人全員が関与して協議しなければならないという意味であって、

仮に相続人の1人でも参加せずに決定した場合、その遺産分割協議は無効となりますから

注意してください。

ただし、相続を放棄した人は相続人ではなくなりますから、

協議に参加する必要はありません。

また、相続人が未成年や認知症で判断力を欠く場合や、

行方不明などの理由で協議に参加できない場合でも、

代理人を立てるなどして全員が関与していることが必要です。

この場合は別項をご覧ください。

相続人の順位と遺言の有無

遺産分割にあたって最優先されるのは遺言です。

ただし、遺言がない、あるいは遺言に一部の財産しか記載されていないなどの場合は、

遺産分割協議が必要になります。

この際の目安になるのが法定相続分で、基本となる順位も決められており、

故人との交流ではなく戸籍上の血縁関係によるものとなっています。

常に相続人となるのは配偶者で、

その他は優先度が高い順に子、直系尊属、兄弟姉妹となります。

《 相続人の順位 》
順位故人との関係 詳細
配偶者 配偶者がいる場合は以下の順位の者と共に、常に相続人となる。
第1順位 実子も養子も相続分は同じ。
子が故人の場合は孫となる。
第2順位直系尊属 父母のこと。第1順位がいない場合。
父母が故人の場合は祖父母となる。
第3順位兄弟姉妹
第1・2順位がいない場合。
兄弟姉妹が故人の場合は甥・姪となる。

これらに基づいて、相続人全員で遺産分割協議を行っていきましょう。

分割の方法については別項をご覧ください。

遺産分割協議書の作成

協議のめどがついたら「遺産分割協議書」を作成します。

協議書を作る目的は、話し合ってまとまった詳細を最終の結論として全員で認め、

のちにこれを覆す人が出てトラブルにならないようにするためです。

相続人による「契約書」と公的な「証明書」を兼ね備えたものといえますね。

また、故人の凍結された銀行口座や不動産の相続手続きをする際にも

遺産分割協議書が必要なことがあります。

預金や不動産の相続に関する詳細はこちらの記事をご覧ください。
死亡後の銀行の手続き、凍結や相続税について
不動産の相続手続き方法とは?相続登記や税金について

それでは、遺産分割協議書はどのように作成すれば良いのでしょうか?

実は指定のフォームはなく、パソコンでも手書きでもOKです。

ただし、相続人の住所・署名は偽造などのトラブル防止のためにも自筆にしましょう。

具体的な書き方は次の通りです。

遺産分割協議書の作成例

               遺産分割協議書

 
平成〇年〇月〇日、東京都渋谷区渋谷〇丁目〇番地〇号<故人氏名>(最後の本籍地 東京都…〇丁目〇番地〇号)の死亡によって開始した相続の共同相続人である<相続人1 氏名><相続人2 氏名><相続人3 氏名>は、本日、その相続財産について次の通り遺産分割の協議を行った。

一、次の遺産は<相続人1 氏名>がすべて単独で取得する。
 

  1. 所  在 渋谷区渋谷〇丁目
    地  番 〇番地〇号
    地  目 宅地
    地  積 123.45㎡
  2. 所  在 渋谷区渋谷〇丁目
    家屋番号 〇番地〇号
    種  類 居宅
    構  造 木造瓦葺2階建
    地  積 1階 50.00㎡  2階 45.67㎡

二、次の遺産は<相続人2 氏名>がすべて単独で取得する。

    ××銀行××支店 普通預金 口座番号 1234567 金150万円
    △銀行△支店 定期預金 口座番号 7654321 金300万円

本遺産分割協議の成立を証するため、本協議書を3通作成し、署名捺印のうえ各自1通を保有する。

平成31年1月31日

              住所 東京都渋谷区渋谷〇丁目〇番地〇号
                      <相続人1 氏名・押印>
              住所 東京都港区…〇丁目〇番地〇号
                      <相続人2 氏名・押印>
              住所 東京都世田谷区…〇丁目〇番地〇号
                      <相続人3 氏名・押印>

このように不動産は登記事項証明書の通り、

預金などは銀行支店・口座番号と金額などを正確に記入しましょう。

押印には実印を用い、それぞれの印鑑証明書を添付してください。

なお、トラブル防止のため、相続人が複数いる場合は書類も複数作成するので割印を、

協議書が2枚以上になる場合は契印を押すことを忘れないでください。

作成中に間違いに気づいたときは作り直しが望ましいですが、

手書きで大変な場合は訂正することもできます。

ただし、該当か所に二重線をひいてその上に押印のうえ修正するなど、

正式な訂正方法で行うことが必要です。

遺産分割の方法

「遺産を分割する」と言っても、

現金のようにきれいに分けられるものばかりではありません。

土地や家屋、美術品など分けられない遺産はどうすればよいでしょうか

このような場合は、次の4つのいずれかの方法が取られることが多いです。

遺産の分割方法

  • 現物分割
    遺産が複数ある時に用いる方法。例えば、家屋と土地は配偶者、預金は長男、有価証券は長女…のように遺産を現物のまま分割する。
  • 代償分割
    分割できない遺産のみの場合に用いる方法。
    例えば、家屋と土地しかない場合、配偶者がこれをすべて相続する代わりに、子供たちには代償金として現金を支払う。
  • 換価分割
    遺産を売却し、その代金を分割する方法。
  • 共有分割
    遺産を法定相続分や遺産分割協議の割合に応じて共有する方法。

このように、どの方法でどのように分割するかを決めるのが、

遺産分割協議というわけです。

納得のいくまで話し合いましょう。

ただし、物や現金でしっかりと分け合う分割法に比べ、

共有分割は「遺産相続の先送り」的な状況も生みかねません

例えば親子3人で家屋と土地を共有分割したとして、

数年後、誰か一人が売りたくなっても自分の持ち分だけ売るわけにはいかないので、

また話し合いが必要な場面になることもあるからです。

また、代償分割をしたときは通常と異なる相続税の計算方法になりますし、

売却によって得た利益は相続で分割されるものであっても所得税の課税対象となります。

注意しましょう。

遺産分割協議がまとまらないとき

このように遺産分割協議を行い、

相続人それぞれが納得できる形で遺産を分けるのが望ましいことです。

しかし、一人でも納得できない人がいると協議が成立せず、困った事態も生じます。

遺産の相続方法が決定しないと、故人の財産を動かすことができないからです。

そこで、協議が進まない場合は、

管轄の家庭裁判所に「遺産分割調停」を申し立てます

遺産分割調停とは、

相続人が裁判官や調停委員に対して、自分の相続分に関する主張を行い、

妥当な相続分を判断してもらう方法です。

調停委員には弁護士・医師など教養のある40歳以上の人が裁判所によって選ばれ、

客観的な立場から分割の判断をします。

 
調停の申し立て方法は次の通りです。

《 遺産分割調停の申し立て方法 》
書類遺産分割調停申立書
記入事項申立人の氏名・押印、被相続人(故人)の氏名・死亡日・最後の本籍地・住所、趣旨(調停欄に✓)、添付書類(該当欄に✓)、理由(該当欄に✓)
提出先相手方のうち一人の住所地を管轄する家庭裁判所など
提出できる人相続人、包括受遺者
必要なもの 申立書、戸籍(除籍など)謄本一式、相続人全員の住民票または戸籍附票、遺産に関する証明書
手数料収入印紙1,200円、連絡用の切手

なお、申立書は裁判所窓口かホームページより入手できます。
遺産分割協議申立書ダウンロード(裁判所HPより) 
記入方法(裁判所HPより)

 
また、調停は次のような流れで行われます。

遺産分割調停の流れ
 

  1. 調停の申し立て
    申立書に必要事項を記入し、管轄の裁判所に提出
  2. 申立書の受理と相手方への送還
    何が申し立てられたのかを伝えるため、申立書の写しが相手方に送られる。これにより裁判所から調停を行う日(期日)の指定がなされる。
  3. 期日
    裁判所に出頭し、裁判官や調停委員に自分の主張を伝える。他の相続人も一人ずつ呼ばれ、それぞれの主張を行う。一回で決まらなければ数回行われる(1か月に1回ほど)。
  4. 調停がまとまったら…
    強制執行の効力をもつほどの「調停調書」が作成される。
    調停でもまとまらなかったら…
    自動的に審判(裁判)手続きが開始される(申し立てを取り下げれば終了)。

なお、平成27年度の司法統計調査によると、

裁判所での話し合いの回数(期日回数)は2・3回が最も多く

1~5回と答えた人が過半数を占めていました。

また、これに要した期間は1年以内と回答した人が33%で最多

次いで6ヵ月以内が24%、3ヵ月以内が10%となっており、

中には3年以上かかった人も3%いました(参考 裁判所・司法統計)。

調停にはある程度の時間がかかることを覚悟して申し立てるようにしましょう。

もちろん、調停を経ずに初めから強制力をもつ「審判」を申し立てることも可能ですが、

他の相続人が血縁者ならできるだけ双方の言い分を聞き、

穏便な解決策を模索する「調停」の方が好ましいと思います。

相続人に悩むとき

前述の通り、複数人で遺産を相続するには「遺産分割協議」を行い、

これにはすべての相続人の参加が必要です。

ところが、相続人が未成年者や認知症などで

自分の利益・不利益を正当に判断できないこともあります。

また、協議に呼びたくても行方不明(所在不明)などで連絡がつかないこともあります。

しかし、このような状況の相続人がいたとしても、

この人達を除いて行った遺産分割協議は無効となってしまうのです。

そこで、協議ができない・参加できない相続人の代理を立て、

その相続人の不利益をもたらさない立場で話し合いに参加してもらうことが必要です。

代理となれるのは、相続人の年齢・状況により次のような違いがあります。

《 代理となる人の例 》
相続人 代理となる人の例
未成年 親権者
未成年後見人
特別代理人(親権者と利益相反の場合)
判断能力を欠く人
(認知症など)
成年後見人
後見監督人(成年後見人と利益相反の場合)
特別代理人(後見監督人が選任されていない場合)
行方不明者不在者財産管理人

なお、後見人や代理人・監督人は家庭裁判所に申し立てることにより選任されます。

場合によっては親戚や友人などを候補者として申請することも可能ですが、

あくまでも相続人の立場を優先して協議できる人が前提となります。

 
では、法定相続人がいない、あるいは全員が相続放棄したなどの場合(相続人不存在)

どうなるのでしょうか?

まずは遺言書の有無を確認します。

例えば、友人、お世話になった人や施設など、

第三者を指定した遺言状があれば法定相続人でなくても相続可能です。

しかし、法定相続人も遺言もない場合は、次のような流れを経て、

最終的に国庫(財務省)に帰属することになります。

相続人不存在の場合の流れ
 

  1. 相続財産は法人となる(民法第951条)。
  2. 相続財産を管理する「相続財産管理人」が選定され、相続人や相続債権者を探す手続きを13カ月以上行う。
  3. 見つかった場合はその人が相続し、見つからなかった場合はにより国庫に帰属(民法第959条)する。

ちなみに、相続財産管理人には多くの場合、地域の弁護士か司法書士が選任されます。

また、“相続人を探す手続き”とは官報で公告することを指し、

名乗り出る人がいない場合、3回行われます

官報は政府発行の新聞のようなもので、一般の人が目を通す機会は少ないですが、

30日以内の分はインターネットにて無料で閲覧できます。

インターネット版官報(本紙「公告」内・裁判所部分)

それよりも古いものは大きな図書館で閲覧するほか、書店で購入することができます。

 
なお、相続人不存在が確定したあと3ヵ月以内であれば、

「特別縁故者」による財産分与請求が認められています

特別縁故者とは法定相続人ではないけれど故人と一緒に暮らしていた人(内縁者含む)や

日常的に介護をしてきた人など、特別に関係が深かった人のことです。

家庭裁判所が認めれば、清算手続きの終了後、

特別縁故者が残った財産の一部あるいは全部を受け取り、残りが国庫に納められます。