弔辞のマナーとは?書き方や禁句、流れについて

親しい人が亡くなったとき、葬儀での別れの言葉「弔辞」を頼まれることがあります。

参列者の前で読み上げるとなると緊張するものですし、

まず、何を話せば良いのか悩んでしまいますね。

ここでは、弔辞の書き方や読むときの作法など、

弔辞を依頼されたときのマナー全般について、

実例を交えてお伝えしています。

弔辞とは

近年では故人や遺族の意志によって、

葬儀のスタイルは簡素なものから豪華なもの、趣向をこらしたものなど実に様々です。

ですが、どんな葬儀にしつらえても、

言葉以上に遺族や参列者の心を打つものはありません

その最たるものが「弔辞」です

故人の死を悼み、故人の前で最後の別れを惜しむ

それが「弔辞」に込められたメッセージです。

ですから、弔辞を依頼されたということは、故人との関りが深いことはもちろん、

その悲しみを分かち合ってくれる人に違いない…という遺族の信頼の証でもあります。

大変かもしれませんが、弔辞を頼まれたら快く引き受けるのが礼儀です。

下記のようなポイントやマナーに注意して、

最後の別れの言葉を告げる準備をしていきましょう。

弔辞を頼まれたら

一般的な葬儀では、1~3名に弔辞を依頼することが多いようですが、

規模の大きさによっては5名程度になることもあります。

できれば依頼を受けた時に、


  • 何人に頼んでいるのか。
  • 故人とはどんな関係か。


の2点について確認しておいた方が良いでしょう。

なぜなら、人数が多ければ弔辞の内容がかぶる可能性が出てきますし、

読む時間も長すぎないように配慮する必要性があるからです。

特に、自分以外に弔辞を読む人と故人の関係がわかっていると、

自分がどの立場から弔辞を読めばよいかが明確になってきます

 
例えば、遺族側は“学生時代からの友人”と“会社での同僚”のように、

故人の人生における接点の異なる人に頼むことが多いですから、

相手がわかっていれば弔辞に盛り込むエピソードも絞られてくることになりますね。

仮に、自分が大学も会社も故人と同じという場合、別の弔辞担当が会社関係者なら、

自分は大学の友人という立場から弔辞を述べるべきだとわかるわけです。

中には、葬儀社や遺族から弔辞の内容について具体的に依頼されることもありますので、

その場合は指示に従いましょう。

弔辞のポイント

弔辞には注意すべきポイントが4つあります。

弔辞のポイント

  • 故人とのエピソードを交え、最後の別れを告げる内容にする。
  • 3~5分くらいの長さにまとめる。
  • 忌み言葉を使わず、直接的な表現を避ける。
  • ゆっくり、はっきり読み、わかりやすい言葉で伝える。


この4つに注意して弔辞をまとめていきましょう。

しかし、葬儀という儀式である以上、ある程度の内容が求められますし、

正式な読み方のマナー(奉読の作法)もあります

もう少し詳しく説明していきましょう。

弔辞を書く紙

弔辞は巻紙に薄墨で書いて奉書紙に包むのが正式です。

巻紙も奉書紙も和紙でできており、

書道用品を扱っている店舗やインターネットで入手できます。

巻紙にはロール状のものと折りたたまれたものがありますが、

最終的には折りたたむのでどちらでも大丈夫です。

 
しかし、近年では毛筆ではなくペンで書いたり、

巻紙ではなく便箋に万年筆で書いたりする略式も増えています。

中にはパソコンなどで作成する人もいますが、故人への最後の手紙ですから、

できれば字を書くのが苦手でも、

心を込めて自筆する方が個人的には良いと思います。

また、弔辞は葬儀後も喪家(故人の家)で保管されることが多いものです。

構成だけ考えてその場の思い付きで話すのではなく、

きちんと書いて持参するのがマナーです。

 
書き終わったら、奉書紙に包むか便箋に入れましょう。

奉書紙での包み方

 

  1. 折りたたんだ原稿を、奉書紙の中央よりやや右に載せます。
  2. 始めに右側(全体の3分の1より小さめ)を折り、原稿にかぶせます。
  3. 次に、左側を折って、いちばん上に重ねます(この面が表になります)。
  4. 最後に上と下の余白部分を裏側へ折り曲げます。


この折り方は“左前”といい、慶事は右前・弔事は左前とするのがマナーですので

間違えないように気をつけてください。

 
便箋の場合は、一重のものを使うのがマナーです。

二重封筒は中身が透けないのでよく用いられますが、

弔事では“不幸が重なる”として縁起が悪いと言われていますから注意してください。

いずれの場合も表に「弔辞(または弔詞)」と書きましょう

基本構成と長さ

弔辞を考えるとき、まず大切なのは

どうして自分が弔辞を依頼されたのか」を明確にすることです。

そして、故人との関係を考慮し、生前の思い出や故人の人柄を偲ばせるエピソードを、

自分なりの言葉を使って、次のような流れでまとめていきましょう。

弔辞の構成と流れ

  1. 故人への呼びかけと、訃報に対する驚き・悲しみ
  2. 故人の経歴と自分との関係の紹介
  3. そこでの故人とのエピソード、故人の功績や人柄を称える言葉
  4. 遺族への慰めと励まし
  5. 現在の心境と今後への思い、別れの言葉



 
弔辞には特に決まった表現などはありませんので、

比較的自由な文体で述べることができます。

 
まずは、故人に二人称で


「○○○○さん」

と呼び掛けることから始めましょう。

フルネームが良いとされていますが、

ごく親しければ呼び慣れたニックネームで別れを告げるのも良いでしょう。


「○○○○さん、…やっぱり、いつも通り○○と呼ばせてもらうぞ」

と断っておくと失礼に当たりません。

故人が社会的地位のある人で、自分が仕事関係の代表として弔辞を送るならば、


「ここに株式会社××専務取締役○○○○氏の葬儀が執り行われるにあたり、
謹んでご霊前に申し上げます」

のようにすると良いでしょう。

ただし、キリスト教では呼びかけをしないのが一般的ですので、

省くようにしましょう。

併せて、悲しみに暮れる今の心情を伝えましょう。

「一昨日、○○さんの悲報を聞いてからずっと、こうしてここに立っている今でも、まだ信じられないし、信じたくない気持ちでいっぱいです。」

なぜ悲しいのか、訃報を聞いたときの驚きなどでも良いでしょう。

 
次に、自分が故人の人生においてどのような関りを持っていたかを伝えます。

この部分は、故人にというよりも

参列している人に向けての自己紹介的な要素を含んでいます。

「○○さんと私は、大学のサークルで知り合ったんでしたね。」

 
「○○さんとは××会社の同期として、もう30年以上の付き合いになるね。」

しかし、故人の経歴に触れることにもなりますから、

間違いや失礼のないように十分気をつけましょう

 
続いて、その関係性における故人とのエピソードや思い出に触れていきましょう。

ただ出来事を羅列するのではなく、

さりげなく故人の人柄や長所などを織り交ぜると遺族にとっても喜ばしく、

故人へのはなむけにもなります。

「入学直後、友達がいなくて一人でいたら、○○さんが笑顔で話しかけてくれました。」

 
「自分の悩みを親身になって聞いてくれ、何日もたってから“こうしたらどうかな”と提案してくれたことがあったね。
ずっと考えていてくれたのかと思うと、本当に嬉しかったよ。」

 
「思い描いていた夢がなかなか叶わず、落ち込んでいた時は、朝まで黙って飲み明かしてくれました。」

などのエピソードで良いのです。

ただし、誰が聞いても不愉快にならない内容にしてください。

また、故人を尊重するあまり美辞麗句をちりばめると、かえって虚しく感じるものです。

感情的になり過ぎるのも聞きにくく、

遺族の悲しみも増してしまいますから、気をつけましょう。

 
そして、残された家族を慰め、労わる言葉を掛けましょう。

「ご家族の悲しみはいかばかりかと思います。
ですが、○○が絶やさなかった笑顔を、どうか一日でも早く皆様が取り戻せたら…と願っております。」

辛い気持ちに寄り添う言葉や、力になる旨などを伝えられれば十分です。

 
最後に、故人との別れに際しての心境やこれからの思い、

そして「別れの言葉」を伝えて締めくくります

「あの時○○が言ってくれた言葉は、これからも私の支えです。
○○、さようなら。また、一緒に飲もうな。」

 
弔辞には堅苦しい表現や難しい言葉よりも、

わかりやすい言葉で素直に気持ちを伝える方が適しています。

気負う必要は全くありません。

故人との思い出を思い浮かべつつ、書きだしていくとまとまってくると思いますよ。

また、弔辞を読む人数にもよりますが、

持ち時間(奉読時間)は一人3~5分程度と考えましょう。

字数にすると、800~1000字程度(原稿用紙2~2.5枚)が目安になります。

原稿用紙に下書きし、読み終わるまでの時間を計って確認しておきましょう。

気を付けたい言葉

弔辞は比較的自由に書けるものではありますが、

故人の親族や関係者が一堂に集まる場での言葉ですから、

不快にさせる表現・失礼な内容は避けるべき事柄です。

さらに、葬儀という特別な儀式では、

縁起の悪い言葉や不幸を招くかのような表現

「忌み言葉」として禁句とするのがマナーです。

忌み言葉には次のようなものがあります。

 

《 忌み言葉 》
避けるべき言葉 理由
「重ね重ね」「重々」「度々」
「再三」「再び」「次々」
「またまた」「まだまだ」
「ますます」「いよいよ」
「つくづく」「返す返すも」
「これからも」「この先も」
「おって」「続く」
言葉を重ねることで“不幸が重なる”。
この先も不幸が訪れるかのように聞こえてしまう。
「4」「9」 「死」や「苦」に通ずる。
「消える」「大変なことになる」不吉さを連想させる。
「浮かばれない」「迷う」故人の死後に不吉さを感じさせる(仏教)。

 
また、「死ぬ」などの直接的な表現も、

次のように婉曲的に言い換えるのがマナーとされています。

 

《 直接的な表現 》
元の言葉 言い換えた表現
死ぬ・死亡・死去・亡くなる ご逝去、他界される、ご永眠
召天(キリスト教)
急死・事故死急なこと、突然のご不幸、悲運
生きる ご生前
恩を受ける大恩・恩義・恩人・恩情
※故人を尊重した言い回し
(故人との)別れ
※できれば言い換える
永別・訣別
悲しみ
※できれば言い換える
悲哀・悲痛・痛恨

書き終わったらこれらの表現を使っていないか、よく見直しておきましょう。

読むときの手順と読み方

では、実際に弔辞を読むときの流れを把握しておきましょう。

弔辞の手順

 

  1. 司会の人から声がかかったら、進み出ます。
    弔辞は左手に持つか上着のポケットに入れておきましょう。
  2. 僧侶や遺族に一礼してから霊前の所定の位置まで進み、遺影に向かって一礼します。
  3. 左手で弔辞を持ち、上包みとなっている奉書紙を右手で開きます。
    弔辞を取り出したら上包みを手早くたたみ、その上に弔辞を重ねて右手で開いていきます。
    弔辞台などがあれば、そこに上包みをおいても構いません。
    目線が下がり過ぎないよう、胸の前あたりで捧げ持つようにしましょう。
  4. 「弔辞」と言ってから本文を読みます。
  5. 読み終えたら包み直し、表書きが祭壇に向くようにして両手で供えます。
  6. 遺影に一礼し、僧侶や遺族にも一礼してから席に戻ります。


 
また、弔辞を読む時には次の点に気をつけましょう。

読むときの注意

  • ゆっくり
  • はっきり
  • 丁寧に


もし、涙がこみ上げてしまったら、無理に続けずに一旦区切り、

深呼吸をしてから続けましょう

なお、弔辞を頼まれたものの、急な事情などで参列できない場合は、

あらかじめ弔辞を録音して代理のものに持たせたり、

音声データを送ったりして会場で流してもらうこともあります。

USBメモリやテープなどを持参する場合はむき出しにせず、

袱紗や布・紙などで包んでいきましょう。

その他のマナー

まず大切なのは「弔辞を頼まれたら固辞しない」ということです。

“大役を務めるのは無理”、“人前で話すのは苦手”という人もいると思いますが、

既に述べた通り、弔辞は遺族の信任が厚い人に依頼するものです。

もし断ったら、遺族の信頼を裏切ることになるだけでなく、

悲しみの中、準備に追われる遺族に、

また別の誰かに依頼するという重荷を背負わせることになります。

ここは快く引き受けて、遺族を安心させてあげましょう。

 
また、弔辞は故人への“別れの言葉”ですが、

その場にいる遺族や参列者も一緒に聞くものです。

前項でも触れましたが、

故人や遺族、参列者を不快にしたり失礼な態度や表現をしたりすることは、

最低限のマナーとして注意しなければなりません。

自分にとっては懐かしい思い出も、

参列者の誰かの古傷やプライドに触れるようなら避けるべきです。

書き終わったら冷静に読み返し、チェックしておきましょう。

 
同様の理由で、故人が亡くなった原因に触れるのはよくありません

ただし、故人の経歴や業績を紹介するうえで触れなければならない場合…

例えば業務中の事故死などは、簡潔に説明する程度ならやむを得ないでしょう。

長期療養ののちに亡くなった場合は、なるべく元気だったころのエピソードを中心にし、

病みやつれた様子などには触れない方が良いでしょう。