香典や供花の辞退は大丈夫?お互いの対応について

香典や香典に替えて贈る花や品物は、

葬儀には欠かせない儀礼として長らく扱われてきました。

しかし、贈られたものに対してお礼を返すというマナーには煩わしい一面もあり、

近年の葬儀の簡素化に伴って贈答を行わないケースも増えてきています。

…とはいっても、一般的な慣習を止めると、

“非常識”や“マナー違反”と受け取られる可能性も否定できません。

ここでは、香典や供花を辞退するときの

「受け取る側(施主)」と「送る側(参列者)」の対応について、

お互いが不快な思いをしないための方法を紹介していきます。

辞退するとき(喪主・遺族側)

故人や遺族の意向で、参列者に対して

「香典・供花・供物を持参・送付しないでほしい」とお願いすることがあります。

なぜ、あえて従来の慣習と違う方法を選択するのでしょうか?

ここでは喪主・遺族側からみた辞退のメリット・デメリットや、

実際の対応について解説していきます。

辞退するメリット・デメリット

香典や供花・供物を受け取ると、


香典 → 香典額の1/3~半額くらいの品物を返す(香典返し)

供花・供物 → 香典と供花・供物の額を合計した金額の1/3~半額の品物を返す
       (または香典返し+菓子折りなど)

お礼の品として返すのがマナーとされています。

しかし、これを止めることによって次のメリットが得られます。

香典・供花・供物を辞退するメリット

  • 参列者に負担をかけず、純粋に故人を見送ってもらえる。
  • 通夜・葬儀・告別式などの終了後に会計処理をしなくて済む。
  • 香典返しやそれに上乗せしてお礼を贈る手間が省ける。

例えば、わざわざ葬儀へと足を運んでくれた人の中には、

スケジュールの変更やキャンセルをして時間を作ってくれた人もいるはずです。

そういった人に香典という形で金銭的な負担までさせるのは気が引ける

と考える故人・遺族の心情があります。

また、純粋に悲しみ、別れを告げる限られた時間に、

金銭が絡むことへの抵抗を覚える人もいるでしょう。

さらに、通夜から告別式・初七日までを慌ただしく過ごした後で、

受け取った香典の確認作業に追われるのも、

悲しみに暮れる遺族にとっては辛いものです。

加えて、ホッと息をつく間もなく、

今度は四十九日までに香典返しの品物選びと発送の手配を終わらせなければなりません。

香典返しは受け取った金額や物にふさわしい品物を贈りますから、

ある程度個別に対応する必要があるので、気を遣う作業です。

香典などを辞退することによって、

これらの煩わしさから解放されるのは喪主にとっての大きなメリットといえるでしょう。

中には義理や儀礼だけで香典などのやり取りが行われるケースもありますから、

そのために喪主が大きな負担を強いられるのはナンセンスかもしれません。

なお、最近では香典の額を見越した品物を香典返しとして

通夜・葬儀・告別式後の返礼品に替えて渡すケースも増えています。

この場合はさらに慌ただしく品物選びをすることになってしまいますね。

なお、香典や返礼品の詳細・マナーについては、こちらの記事で解説しています。
葬儀・法事の返礼品、香典返しのマナーや相場、渡し方とは?

一方、香典などを辞退することによってデメリットも生じます。

香典・供花・供物を辞退するデメリット

  • 参列者の気持ちを汲まないという批判を受ける
  • 施主の金銭的負担が増大する

もともと香典は、故人を葬儀に用いる“香”を贈る風習でした。

それが時代と共に変化し、香を用立てるためのお金を送るようになったのです。

それを受け取らないということは、

参列者の気持ちをないがしろにしていると感じる人もいるわけです。

また、実際は香典として受け取ったお金の半額程度(香典返しに使った分の残金)は

葬式代に充てることができます。

参列者からすれば喪主の金銭的負担を少しでも担うことが弔意でもあるわけですが、

これも断られるとなると寂しさを感じる人もいることでしょう。

特に年配の人の中にはこれらを非常識と受け止める人も多く、

そういった批判を浴びたり、

場合によっては親族の賛同も得られなかったりというケースもあるのです。

なお、香典を受け取らなくても、

参列してくれたことへのお礼の品(通夜・会葬返礼品)は用意しなければならないので、

この分はすべて喪主の負担となります。

このため、香典などを辞退することによってお礼をする手間は省けても、

金銭的な負担は増すことになる可能性があるのです。

しかし、喪主からしてみれば大切な家族を見送りに来てくれた人達への

お礼として用意するわけですから、当然の出費と捉える人もいることでしょう。

意思の伝え方

香典などを辞退するかどうかは、

メリット・デメリットをよく考えた上で決定する必要があります。

では、辞退すると決めた場合、

どのようにすれば参列者の心情を害さずに伝えることができるでしょうか。

 
まず、必ず前もって参列者に伝えておくことが重要です。

遺族が訃報を連絡するときに、次のように伝えると良いでしょう。

連絡手段が電話・メール・手紙などいずれの場合でも最後に申し添えるようにします。

辞退を伝える例文

「故人の遺志(遺族の意思)により、御香典は辞退させて頂きます。」

「誠に勝手ながら、御香典の儀は固く辞退させて頂きます。」

このとき、辞退の理由を「故人の遺志」としておくと角がたたず、

先方も受け入れやすくなります。

くれぐれも伝え忘れがないように、全員に漏れなく伝えるようにしましょう。

また、辞退を「ご辞退」とする定型文も目にしますが、

辞退するのは喪主なので自分を敬う表現になってしまい、

適切ではありませんので避けるようにしましょう。

また、香典だけでなく供花・供物などのすべてを辞退する場合は、


誠に勝手ながら、御厚志は辞退させて頂きます。

御香典・御供花・御供物などのお気遣いはご辞退申し上げます。

とすると良いでしょう。

ただし、「御厚志」のような婉曲的な表現では先方に意図が伝わりにくいとして、

最近では後者のような直接的表現で伝えることも増えています。

もちろん、御香典は受け取って、供花・供物は辞退することもあり、

この場合は「供花・供物は辞退させて頂きます」とだけ伝えるようにします。

 
さらに、辞退の意思表示を明確にするために、

葬儀を行う会場の受付に「御香典(または御厚志など)は辞退させて頂きます」といった

看板・張り紙などを設置しておきましょう。

葬儀社にお願いするとたいてい用意してもらえますよ。

参列者側からしてみれば、本来香典を渡すべき受付に辞退の旨が明記されていると

気持ちが楽になるというものです。

香典を出さなくて良いのだと安心してもらえる配慮をしておくことが、

大切というわけですね。

なお、訃報の連絡の仕方などについてはこちらの記事で詳しく触れていますので、

ご参照ください。

危篤や死亡の連絡(訃報)方法について

先方が持って来てしまったら?

それでも義理堅く香典などを持参する参列者もいます。

このような事態を想定して、

受付を担当する人と対応についてよく打ち合わせておくようにしましょう。

まずは、持参した人に対して、

受付係から改めて遺族が辞退している旨を伝えてもらいます

それでも先方が渡してきた場合には、無下に断らず受け取るのが一般的です。

そして、四十九日までに挨拶状を添えて香典返しを贈りましょう。

供花や供物を持参した人についても同様に対応しましょう。

また、直接ではなく、代理人や郵送で届けられた場合も、

断ったり送り返したりせず、有り難く受け取ってお返しを手配します。

なお、会社からの慶弔見舞金や弔慰金は規定により出されるものなので、

受け取った方がよく、お返しの必要もありません

ただし、忌引き休暇などで迷惑をかけているお詫びとして、

後日菓子折りなどを持参することをおすすめします。

 
また、親戚が持ってきた香典に関しては、

軽くお断りした上で受け取っておいた方が今後の関係に響きにくいでしょう。

この場合は人目につかない親族控室などで受け渡しするようにしましょう。

辞退されたとき(参列者側)

訃報や葬儀の案内を受けたとき、

葬家から香典・供花・供物を辞退されることがあります。

最近では葬儀の規模が縮小し、

身内だけで行う「家族葬」の場合は参列も遠慮されるケースが増えていますから、

こういった申し出にどう対応するべきか悩むことも増えることでしょう。

ここでは、辞退された場合の参列者側の対応について紹介していきます。

辞退するべき・しないべき?

葬家にしてみれば“お気持ちだけで十分”ということで辞退を申し出ているわけですが、

参列する側から見れば手ぶらで弔問するというのも気が引けるものですね。

しかし、ここは素直に葬家の申し出を受け入れるのがマナーです。

今までの慣習や地域の風習、その人自身の考えなど様々だとは思いますが、

葬儀の主役は故人、ひいては遺族にあたる葬家です。

その意向に逆らって自らの意思を優先させることは非礼といえるでしょう。

 
ただし、心配なのが「他の人の対応」ですよね。

自分は葬家の申し出に従うつもりでも、

他の参列者が香典を持参していたら肩身の狭い思いをすることになりかねません。

こういった場合は万が一を考えて、念のため香典を持参しておき、

他の参列者や受付での対応を見てから渡す・渡さないの判断をすることを

おすすめします。

 
また、通夜や告別式の後には“通夜振る舞い”や“精進落とし”など

会食の席が設けられていることがあります。

香典も渡していないのに飲食するのは気が引けるかもしれませんが、

会食は弔問に対するお礼なので、遠慮することはありません

例え一口でも頂いてから退席するのがマナーというものですから、

勧められたら故人を偲んで席に着きましょう。

どうやって弔意を示す?

参列者から見れば故人に対する悲しみや別れを惜しむ気持ちを、

葬家に対して伝えたいという思いがあることでしょう。

親しい関係であればあるほど、その思いは強いと思います。

一般的にはそれを香典の金額や花などに替えて表すことが多いのですが、

それを辞退されている場合はそうはいきません。

しかし、遺族にも

「純粋な気持ちだけで弔意を示してくれる方が嬉しい」という思いや、

香典返しの負担が辛いという事情があるかもしれないのです。

香典を渡すことが必ずしも弔意になるとは限らないわけですね。

弔事では「お悔やみ申し上げます」などの決まりきった挨拶が多く、

これだけでも十分ではありますが、さらに弔意を示したいのであれば、


「私にできることがあれば、何なりとお申し付けください」

「お辛いことと思いますが、あまりお力落としのないように、ご自愛くださいね。」

などと伝えると良いのではないでしょうか。

また、告別式が終わって数日も経つと弔問客も減り、

遺族の中には故人が世間から忘れられてしまったような淋しさを感じる人もいます。

葬儀の時だけでなく、

しばらくたってからも電話や手紙などで連絡を入れてあげると喜ばれますよ。

どうしても渡したいときは?

葬家が辞退を希望したら、それを受け入れるのがマナーです。

渡せば葬家に香典返しなどの手間を取らせてしまうことになりかねませんし、

何よりも故人や遺族の気持ちを無下にすることになってしまいます。

今後のお付き合いのためにも、相手に合わせることが大切です。

 
しかし、中には故人にひとかたならぬ恩があり、

少しでも報いたくて故人の霊前に香典などを供えたいという場合もあるかもしれません。

そういった場合でも香典などは控え、別の機会に行う方がよいとは思います。

あまりお勧めはしませんが、どうしてもというのであれば考えられる対応の1つとして、


香典などは贈るが、香典返しなどの返礼品は辞退する

という方法があります。

つまり、贈る側の気持ちを受け入れてもらいつつも、

葬家には余計な負担を掛けないというものです。

具体的な方法として、

  • 不祝儀袋の表書きを「御香典」などとせず、「御供」にする。
  • 不祝儀袋の後ろや中袋に
    「誠に勝手ながら、お返しなどのご配慮は遠慮させて頂きます。」
    返礼品辞退の旨を書き添える
  • 会場の受付で渡すのではなく、人目のないところで遺族に直接渡す

とすると良いでしょう。

供え物すべてを辞退されるケースもありますが、

故人への供養として「お供え」としてあれば相手も受け入れやすくなります。

また、他の参列者がいるところで自分の香典だけ受け取ってもらうというのは、

周囲を戸惑わせることになるので、直接遺族に渡すと良いでしょう。

このとき、不祝儀袋に書くだけでなく、返礼品辞退の旨を申し添えながら渡すと、

こちらの意図を察してくれるかもしれません。

ただし、それでも強く受け取りを辞退されたら、無理強いしない方が賢明です。

押し問答になるとその後の関係にも影響しかねませんから、十分に注意してください。